80歳を迎えるさわだ食堂の父ちゃんが言う。
「あれほど元気だった母ちゃんが死んでしまって、張り合いがなくなって、本当はもういつ店を辞めてもいいかなと思ってたが。だども、お前に誘われて本気丼始めてみたら、若い人たちが大勢来てくれるようになって嬉しくてそ。今ちっと店を続けることにしたて」
シャイな父ちゃんが目を細めて笑顔で話してくれた。
さわだの父ちゃん
創業から半世紀以上、アナログ世代の父ちゃんは、いつも本気丼の月集計を市役所まで届けてくれる。
今年で連続五年、本気丼キャンペーンに毎年参加してもらっている。
補助金に頼らない街おこしを掲げる本気丼キャンペーンは、運営費用のほとんどを参加店の負担金で賄っていることから、約半年のキャンペーンで2万5千円の費用は一人で切り盛りする個人経営店にとって、決して安いPR費用ではない。
実際、本気丼キャンペーンの参加店は毎年約50〜60店で推移しているが、毎年入れ替わりも多い。
ただこの地域の新聞の折り込み広告費の相場と比較しても、本気丼キャンペーンのようにWEBサイトやSNSで頻繁に情報を更新し雑誌や新聞、テレビやラジオでフリーのパブリシティを得ているものは少なくCP感は比較的高いのだが、やはり実際の売り上げに直結しないPR費用は当然のことながら省かれる。
毎年、本気丼キャンペーンに参加する理由
前に一度、父ちゃんに毎年参加してくれる理由を聞いたことがある。
「一生懸命の若い衆から声をかけられたものを断る理由がない」
と言い、すぐ厨房のなかに入っていったことを今も鮮明に思い出す。
高校生から社会人なりたての頃、店を覗くといつも元気に声をかけてくれたあの優しい母ちゃんはもういないが、シャイで一本気の優しい父ちゃんにはこれからも身体の許す限り、この店を続けてもらいたい。
こういう気概のある老舗が街には必要だと思う。
私も毎年、これからも声をかけさせていただきます。